昨今、「ニューノーマル」や「新しい生活様式」などという言い方がなされています。こうした表現は、コロナ危機以降に新しく安定したライフスタイルが約束されているかのような印象を与えます。しかし、私の考えによれば、コロナ危機後に訪れるのは、新しい「アブノーマル」という事態です。
なぜ新しいアブノーマルなのか。一つの理由は、新型コロナウィルスは変異を繰り返し、これから発明されるであろう予防接種が効かない可能性もあると伝えられていることによります。私たちはウィルスとの「常在戦場」に搔き立てられる事態にいるという意味でアブノーマルなのです。アブノーマルという言葉をあえて使うもう一つの理由は、私たちの未来は予想もつかないものとなることが確実だからです。
本セッションでは、こうした状況を前提として、ブランド戦略の今後のありかたを考えてみます。手がかりとなるのは、いち早く到来した「デジタル社会」における消費者購買のありようです。もうひとつの手がかりとなるのは、過去の歴史的な転換期に見る知見です。
私たちマーケターは今、こうした時代にどのような生き方を選択すべきかが問われています。
中央大学ビジネススクール
教授
中央大学ビジネススクール教授。京都大学博士(経済学)。前・日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長(就任予定)。マーケティング論、ブランド論、広告論を専攻。株式会社電通で21年実務を経験したのち、法政大学経営学部教授、コロンビア大学客員研究員などを経て現職。著書『ブランド戦略論』(2017年、有斐閣)など18冊の著書と93本の学術論文がある。日本マーケティング学会マーケティング本大賞、日本広告学会賞、中央大学学術研究奨励賞などを受賞。多くのグローバル企業での講演・研修、また、東証一部上場企業の社外役員を務める。